問題No.12203 【推理クイズ】「●●売りの少女」　前篇

出題者：そうそう◆[14db773]

「マッチはいりませんか、マッチを買ってくれませんか？」
街ゆく人に声をかけ続ける少女。だが誰も買おうとしない。
（どうしよう、こんなはずじゃ…）
籠に残ったマッチを抱え、少女は途方に暮れていた。

〜●●売りの少女〜

私には両親の記憶がない。私を育ててくれたのは、おじいちゃんとおばあちゃんだ。
おじいちゃんはとても優しい。「お前は大きくなったら美人になるぞ。将来が楽しみだなぁ」
いつも愛用のパイプを咥えながらそう言って、頭を撫でてくれる。
おばあちゃんはちょっと厳しいけど、放課後すぐに帰って家事の手伝いをしたりして、一緒にいる時間はおばあちゃんのほうが多かった。

私が１０歳の誕生日を迎えた日に、おじいちゃんが言った。
「お前ももう１０歳か、ワシらの仕事を手伝ってもいい年頃だな」
私は喜んだ。大好きな二人の役に立てるのなら、こんなにうれしいことはない。

仕事は、マッチを売ること。売り場はいわゆる閑静な住宅街の裏通り。人通りは少ないし、時間も短いから、売れる数は多くて１０数個。それでも二人は私をほめてくれた。
でも今日はクリスマス！いつもよりたくさん売れるはず。用意したマッチはいつもの倍だし、おじいちゃんにも「今日は全部売れるまでがんばろうな」って念を押された。（大丈夫、すぐ売れちゃうわ。終わったら、みんなでクリスマスパーティだ♪）

なのに、当日は予報にもなかった大雪。客は全然来ない。早い時間から立っているのに、マッチはまだ一箱も売れていない。 （こ、凍えちゃうよぅ。それに、売れなかったらおうちに帰れない…。
おじいちゃんとは連絡とれないし…あぁ、私、浮かれすぎてた）この雪では、迎えにくるのも難しいだろう。
（ここじゃダメだわ…そうだ！街にいけば、もっと多くの人がいるはず。いつもすぐ売れちゃうんだもん。街行く人に声をかければ、あっと言う間だわ！）

そう思って街に辿り着いたのが１時間前。それからまったく買う人は現れない。
「マッチ！マッチはいりませんか！！」私の声は、ほとんど悲鳴に近かった。
今まで、私に声をかける人がいなかったわけでもない。
「おう、ちょうど火ぃ切らしてたんや。嬢ちゃん、ひとつくれ。それキャバレーの広告？」
「え？ち、違います…普通の売り物です」　「そうなん？まぁいいや、なんぼ？」
「５万円になります。」　「…はあ！？ふざけとんのか！ったく…！」
男の人は吐き捨てるようにして去っていった。

入れ替りに、そのやりとりを見ていた黒服の二人組が近づいてきた。
「誰に許しもらってうちのシマで商売しとんや、ああ？！」
「おい、あまり脅かしてやるな…すまねぇな嬢ちゃん。ちょっと確認したいだけなんだ。そのマッチ、見せてもらえるかな？」こっちのおじさんは優しそうだけど、目は笑っていなかった。この人たちは、おじいちゃんの言っていた「コワイ人」に違いない。私は後ずさると、きびすを返して逃げ出した。
「まて、このガキ！」当然、追いかけてこようとする黒服の男たち。だけど、
『そこの二人、止まりなさい！』さらにその後ろから、黒いコートの人たちが声を上げた。
黒服の人より柄は悪くないけど、あれも「コワイ人」だ。私は構わず路地裏に逃げ込んだ。

はぁ、はぁ…。追いかけられる恐怖でいっぱいで、とにかく走った。
…ふと、扉の下に隙間のある建物を見つけて立ち止まる。（私なら、この隙間から潜りこめるかも…）
まずはマッチの入った籠を押し込み、地べたに這いつくばって隙間をくぐる。雪解けの水溜りで服が濡れるが、構ってはいられない。どうにかくぐり抜け、ひざを抱えて息を潜める。

後篇に続きます。


※　問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。

「●●売りの少女」　前篇への最新コメント

確かに集大成かも。クイズと物語、両方をまとめられてよかったです。
問題文、解説、ヒントともに最大限まで使った上で前後編ですし…

最後まで楽しめました。今までの問題の結晶といったところでしょうか。ありがとうございました<m(__)m>。削除1234

＞yummyさん
元のテーマがうまく噛み合いました。
言葉遣いについてもお褒め頂きうれしいです！

ピンときました。
すごく深い問題でしたね。言葉遣いが上手いですね。

＞エラたんさん
元ネタから連想していく過程で、自分自身楽しめました♪
物語の整合性、という意味での精度には不安があったのですが、
そう言って頂けると嬉しいです！

＞若さん
原典のテーマ自体が良かったのもあると思います。童話って、
深いですよね〜。調べながら、自分も色々勉強になりました。

＞隅田川散歩さん
原典・物語・クイズと、それぞれの着想とミックスさせるのが
作る側としても面白かったです。問題は最初に思いついたので
シリアスな雰囲気にはちと合わない部分もあったと思いますが、
これもある意味、彼女の立場や狂気に合っている気もします。

＞今後の問題作りの参考にさせていただきます。
楽しみにしております♪

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「●●売りの少女」　前篇の情報

問題作成日：2010-05-12
解答公開日：2010-08-12最終更新日：2010-05-13 15:54:15(更新回数：19)
更新内容：
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2010/05/13 (Thu) 08:30　ヒント追加。これ、ヒント欄も文字数たりなくなるんじゃ…（汗）
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2010/05/12 (Wed) 17:04　ヒント追加
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2010/05/12 (Wed) 15:04　ヒント追加
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2010/05/12 (Wed) 12:04


正解率：6%　（正解回数：79　解答回数：1155）

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